102 九寨溝・黄龍 おちこぼれ旅ーその2 九寨溝・黄龍・雅安ー
九寨溝・黄龍 おちこぼれ旅ーその2 九寨溝・黄龍・雅安ー
九寨溝の九寨とはチベット族の九つの村があったところという意味で、標高2000mから3400mにかけて、Y字状に分岐する谷に、大小100以上の湖沼が連なる一帯です。岷山山脈から流れこんできた石灰岩の成分(炭酸カルシウム)が沼底に沈殿し、日中には青、夕方にはオレンジといった独特の色を生み出す、透明度の高い美しい湖や滝がたくさんあります。棚田状の湖群をつくる堤防(石灰華段丘)は石灰分の沈積によって形成されたもの、水流の中に生育する森林も、透明度の高い湖底に沈んだ倒木も表面に石灰分が付着し、いつまでもその形を留めています。
(旅行会社提供の九寨溝マップ Y字型がよくわかります)1970年代に森林伐採の労働者によって(元々居住していたチベット人以外の)偶然に発見されたといいますから、観光地としては新しく、はじめは450km離れた成都から長距離バスか車で10時間かかりましたが、2003年に空港ができ、2024年に成都蘭州間に鉄道が通ったので、アクセスは格段とよくなりました(駅間2時間くらい)。
九寨溝と書かれた入り口
入場口は大混雑でしたが、最も近い景観ポイントまで徒歩で1時間30分、最奥部まで片道30km以上ある広大なエリアなので、とても歩いて回ることはできません。外部からの車両の乗り入れは禁止されているので、専用の天然ガス利用の低公害型バス「九寨溝グリーンバス」を利用します。団体客も利用しますが、殆ど満員です。今回は、特別の入り口を通って、チャーターされた専用マイクロバスに乗ることができました。運転手さん以外に専属の女性が一人乗っているのですが、にこりともせず、何も話さない、日本のバスガイドさんとは大違いです。けれどこの人がいないと、私たちは、車に乗ることができないのだそうで、きちんとした資格を持った偉い人なのだそうです(夫が体調を崩した時に席を替わってくれたり、道筋を指さしてくれたりして、意外に親切だったのですが、九寨溝の入り口を出たら、一言も言わずにぱっと降りてしまったので驚きました。私は、ついつい、日本風に何か運行の手伝いをするのかと思ったら、添乗員さん曰く、バス停の近くだから降りたのだ、とか、残業をしないので、勤務時間が終わるとすぐ職場を離れるのが中国流だそうです)。まず一番近い「火花海」で下車。朝や夕暮れ時にまばゆい太陽が湖面に差し込むたびに、火花が飛び跳ねるように見えるので火花海と名づけられたそうですが、水質研究所の方の説明がありました。地震の時、ここの堤防も大きく壊れてしまって、他から水が流れこみ、全く景観が損なわれ、何とかして修復せねばならなかったが、コンクリートなどは駄目なので、そこにある自然のもの、石や岩を使ってもち米と混ぜて接着して堤防を作ったというのです。なるほど、もち米、さすが中国流。地図があったので、どこが壊れたのですかと聞くと、湖の一端を指さしてくれました。なるほど、見事に石が積み上がっていて、水が堰き止められています。
奥にある丸く白っぽい木の前にある堤防が修復跡。
下の写真の白いところは地震による山崩れの跡。夜だったから被害が少なかったとも。
次は鏡海。山が湖に映るというのは、日本でも珍しくないのですが、中国は、対の思想を重んじるので、とても大切なのだとか。よく晴れて、山が綺麗に映っていたので、大変な混雑でしたので、こちらの写真は適当です。うーん、山が水に映っていますが、透明なので、水底も見えてしまって山と二重写しみたいになってます。これは、日本にあまりないかな。
そのあとは、一気に左奥の長海展望台へ。長海は4000m級の山々に囲まれた巨大な湖、長海をスタートして五彩池を経て上季節海展望台まで主に階段を下りながらのハイキングになります。1000mを25分で歩くというのは、ハイキング初級レベルだそうですが、木の階段の段差が大きく、夫も私もふらふら、やっとのことで降りましたが、皆さんを待たせてしまいました。50分くらいかかったかもしれません。下には五彩池という美しい沼が広がっています。九寨溝の中でも数ある湖の中でも屈指の美しい青色が光り、水深約6mの湖面の底まではっきり見ることができます。日本でいうと福島の磐梯山のふもとにある五色沼のちょっと大きいのが一つにまとまっているといった感じでしょうか。
バスに乗り込み、Y字の分かれ道、「諾日朗観光センター」までいってランチ。
午後、ハイキングはパスし、バスに乗ったまま、時々下りて近場を見ることにしてもらいました(第一回目の落ちこぼれ)。他の皆さんは、きちんと予定通り歩いていましたが、あまりにたくさんあるので、バスから湖を見て、時々途中下車して見るので十分でした。年齢を考えて、ハイキングせずにバス移動も可というツアーを選んでおいてよかったです。というわけで全てではなく一部紹介しますね。
箭竹海瀑布
Y字の右手の一番奥にある箭竹海の瀑布、滝です。
これは、熊猫海。パンダがこの湖に水を飲みに来ていたことが由来とか。ネーミングに意外性があります。
Y字の少し下にある犀牛海。九寨溝で2番目に大きいと言われる湖ですが、一部しか撮れませんでした。その昔、大きな犀に乗った老人がこの湖の水を飲んだところ病気が治った、という伝説から名付けられた、とか。犀がいたのですね。
双龍会瀑布。二つの龍のように滝が向かい合っています。渓流も美しいです。
樹正群海 全長10Kmにわたる渓谷であり「海子」と呼ばれる大小の湖と沼が連なる景観。
地震から見事に復活した九寨溝、ゆき届いた管理のもと、よく整備されていて、たくさんの人で賑わっていました。日本によく似た景色もありましたが、湖の透明度がすばらしかったです。標高が高いため空気が薄く、太陽光がよく透過するからということだそうです。
二泊目もヒルトンに泊まって、翌朝バスで2時間30分かけて黄龍へ。昔は標高4000mの山越えがあったそうですが、今はトンネルができてそれもなくなったためか、バス旅は楽でしたが、現地についてみれば、なかなか大変でした。
黄龍は、岷山山脈の一部である玉翠山の山頂(標高約5100m)から北に向かって伸びる全長7.5kmの峡谷(黄龍溝)であり、世界有数のカルスト地形です。新生代第四紀に隆起した石灰岩層が氷河に侵食されて巨大な峡谷となり、そこに石灰分の豊富な水が流れ続けた結果、石灰華の沈殿したエメラルドグリーンの美しい石灰華段(石灰華段丘とも)をはじめ、黄金色に輝く石灰華の層、そして石灰華の滝や谷が形成されています。黄色がかった乳白色の石灰華の連なりは、雪を頂いた山脈を昇ってゆく黄色い龍の姿にたとえられたのが、命名の由来です。
到着すると、ロープウェイを待つ長い行列。長い廊下が作られていて、その脇をきれいな水が流れています。 黄河の水は涸れ、砂漠化が進む中国でも、こんな奥地の山の中には日本でよくみるような渓流がありました。
ようやく順番となってロープウェイ乗り場へ。廻る速度が早いので、椅子にダイビングをするように慌てて飛び乗りました。ちょっと危ないです。8分ほどで上の駅に到着し、下りてからは電動カート。行きは歩かず、楽をしましたが、一気に一番高いところまで登ったので、一人ずつ酸素ボンベが配られます。
行程は、一番高いところにある最奥部の五彩池(九寨溝と同じ名前、)をみて、麓の「迎賓彩池」までの約3.7kmを歩いて下るのですが、私たち夫婦と、一人のお嬢さん3人は、五彩池だけ見て、下りは電動カートとロープウエイで入り口まで戻るコースにしてもらいました(第二回落ちこぼれ)。
最も美しいといわれる「五彩池」は、黄色がかった乳白色の石灰岩層で堰き止められた693の小池が段になっていて、エメラルドグリーンからサファイアブルーまで五色に色を変えることから名付けられました。廻りの木道は整備されていて、段差も大きくないのですが、標高3553m、富士山の九合目くらい、少し歩くと、すぐ息苦しくなります。配られた酸素ボンベを吸って、また一歩。何とか一回りしましたが、夫は本当に苦しそうで、高山病というのが初めてわかった、とか。
途中の景色。黄土色の斜面にたくさんの水が流れています。五月頃には、アツモリ草がたくさん花開くのだとか。見たいです。予習のために、NHKBSでやっていた「黄龍」を録画して見ましたが、石灰華段丘はどうしてできたかという説明があり、長い年月をかけて枯葉が積もって流れを堰き止め、そこに石灰が流れて壁となってできたのだということでした。
山川に風のかけたるしがらみはながれもあへぬ紅葉なりけり( 百人一首 春道列樹)
という、紅葉の葉が、川の流れをせきとめる歌を思い出しました(石灰華はありませんけれど)。
五彩池のほとりに建つ、600年前に建てられたという「黄龍古寺」という道教の寺院の前の広場で、適宜持って来たお菓子などを食べて休憩。一番いいところを見て、下は見なかったので写真はないのですが、カート乗り場までの登り階段もけっこうきつかったです。
遅い時間に成都に戻り、翌日は、雅安のパンダセンターへ。成都には二日おきに同じ成都東駅から徒歩五分のホテルに泊まり、大きな荷物を預けて、リュックサックで二泊三日の旅をするというパターン、楽ではないかと思って選びましたが、なかなかハードです。
高速鉄道1時間40分で雅安到着。昼食後「雅安碧嶺峡基地ー中国パンダ保護研究中心」へ。バスやカートを使うといっても中国は、どこでも大変広く、日本の動物園のようなわけにはゆきません。段差も多いです。
ここで、日本人観光客に人気があるのが、上野動物園にいた「香香」。 食事の時間は14時。じっと待ちます。気温は35度近く。暑いなか、30分ほどで出てきました。
やっと現れたところ。好物は竹と林檎。竹をおいしそうに食べています。
パンダは暑さが苦手で冷房のある部屋にいて出てこないことが多いとか。数日前のツアーでは、35度のなか1時間待っても出てこなかったことという話なので、隠れていたパンダもいましたが、香香をはじめ、何頭かを見ることができて有り難いことでした。
バス乗り場の売店にはシャインマスカットを売っていました。日本人ガイドさんが、皆さんの夕食のデザートにといって買っていました。
(雅安の売店の写真はなかったので、前に行った松藩で売っていた緑の葡萄)
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