103 九寨溝・黄龍 おちこぼれ旅ーその3 峨眉山・楽山 そして成都へー

 九寨溝・黄龍 おちこぼれ旅ーその3 峨眉山・楽山 そして成都へー

  六日目は 峨眉山です。

  峨眉山は、中国三大霊山(五台山、天台山、峨眉山)の一つ、楽山大仏と共に「峨眉山と楽山大仏」としてユネスコの世界遺産(複合遺産)に登録され、たくさんの寺院があります。一番高い峰が万仏頂(標高3,098メートル)、いわゆる3000メートル級の山です。バスで登りますが、調べてみると、駐車場から何百段もの階段を上がるということ、九寨溝・黄龍で高い山はもう無理かな、と夫と相談して、朝食後、ツアーを「離団」することにしました(落ちこぼれ その3)。同じ宿に二泊するので、「離団」が可能ということはあらかじめ確認してあります。希望を伝えると、日本人のガイドさんが手書きの誓約書を持って来たので、それにサインします。概ね、離団したことによって、参加費用、お昼代などを請求しません、という内容です。

 集合時間に追われることもなく、ほっとしたのか、二人ともベッドに戻り、ゆっくり二度寝。寝るのにも飽きた頃、お昼になりました。ホテルに食堂はないので、向かいのビルのマクドナルドで夫が買って来たハンバーガーと、昨日スーパーで買ったジュースで、ランチ。中華料理続きでしたので、それなりに珍しくおいしかったです。あまり寝ているのもつまらないので、付近を散策。行く前に蛾眉山はどちらの方角?とフロントの人に聞くと、スマホで翻訳の英語を見せて、蛾眉山はここからとても遠いので、見ることができない、と。うーん。名前が「峨眉山世紀陽光大酒店」なのに、峨眉山もしらないとは。街の地図もないといいます。グーグルマップはまともに出てこないし。いろいろと日本の常識とは違います。 

 とりあえず、部屋からみえた向かいの広い公園にいってみますと、どうもこのあたりは温泉が出るらしく(峨眉山温泉?)、中国風の温泉旅館のような宿がいくつも並んでいます。でも全体にさびれていて、あまり人気はありません。観光客目当てのお茶屋さんなんかもあるのですが、閉まっています。こんな立派な建物だから、昔は賑わっていたのではないかと思わせます。

  



 ただ、旅館や公園の向こうにみえる手前の山の後ろにあるひときわ高い山は蛾眉山ではないか、と。次の日にバスに乗った時に日本人ガイドさんが教えてくれた峨眉山はこちら。    

 似てません?うーん、違うかなあ。見る角度が違うだけで同じなのでは?ホテルは、目の前に高いビルが建ったので、見えなくなっただけではないか、というのが私の推測。でもフロントの人は何もしらないのかも。

 帰りにコンビニを見つけたので、飲み物や、おみやげになりそうな、梅干しや、お菓子などを買って帰りました。支払いは、アリペイで。中国ではクレジットカードは全く使えませんし、中国元(現金)は使うことはできても、店の人はおつりがないというので結局使えないことになります(クレカ使えないなんて、すごいですね。ある意味海外との金銭的な流通をシャットアウトしても自国のみでやってゆける、あるいはそれでやってゆきたいという姿勢なのだと考えるべきなのでしょうかー経済のことはあまり詳しくないので、うまく言えないのですが)。グループの皆さんは支払いに苦労していましたが、あらかじめ情報をゲットしていたので、インストールしておいたアプリのアリペイでサクサクと支払いができて快適でした。さて、このコンビニ土産、あとで見たら、なんと産地や製造場所が、広西省、安徽省などなど、中国全土にわたっていて、まったく峨眉山みやげになりそうもありません。日本にはもうちょっと産地に近いものがあるのでは?中国は広い。流通網も膨大。

   さて15時からは、ガイドさんに予約してもらったマッサージです。部屋に来ることになっていたので、どんな人が来るかちょっと怖かったのですが、筋骨隆々としたおばさんが二名、さすが中国、とても上手です。終わってから、アリペイで払うことにしてあったのですが何故か使えない。銀行口座を教えろ、という指示が出るのです。うーん、私はクレカ登録で、口座番号など覚えてないし、もちろん中国の銀行口座なんかありません(あとでわかったのは。コンビニとかお店の支払いはクレカ登録のアリペイで問題ないのですが、個人間送金は銀行口座を登録しておかないと駄目だというきまりがあったのです。初めてのことで知りませんでしたが、一つ勉強になりました)。一人は、スマホの翻訳アプリで、どうしてお金を払わないのですか、といってくる。日本円はありますが、中国元はないし、カードも使えない。ふと思いついて、渡されていた中国人ガイドさんの電話番号を見せて連絡してもらったら、16時過ぎていたので、ホテルに戻っていて、すぐ部屋に来てくれました。彼に日本円を渡し、それを中国元にして渡していました。所変わればなんとやらではないですが、思いがけないことはいろいろ起こるものです。

 さて、このマッサージおばさん二名、一人は折りたたみ椅子を持って来ていましたが、もう一人は何もなくて、どうするのかと思ったら、部屋のゴミ箱の上に、ホテルのインフォメーションブックを載せて、座りました。なるほど、頑丈そうだしね。  

 このインフォメーションブックの表紙に書かれているのは、李白の詩。ああ、李白の詩がお尻の下に敷かれてしまった、と思いましたが、どうにもなりません。

 書かれているのは、「蛾眉山月の歌」。

 李白、二十代半ば、初期の代表作とされています。夜、清渓から舟に乗って三峽に向かう途中、成都から西に流れる平羌江に映り流れてゆく峨眉山の半月を見ながら、旅路で会えなかった「君」を思う気持ちを表現した七言絶句です。 

    峨眉山月歌        李白

峨眉山月半輪秋    峨眉山月 半輪の秋

影入平羌江水流    影は平羌江水に入りて流る

夜發清渓向三峡    夜 清渓を発して三峡に向かふ

思君不見下渝州    君を思へど見えず渝州に下る

 (現代語訳)

峨眉山の空の月が半輪となっている秋

月光は平羌江の水面に映り、きらきらと流れている

夜に清溪を出発して三峽の難所へ向かう

君を思うけれど見えず、渝州へと下っていく。

 初句の語の配置は誰も思いつかない見事さで、そのまま日本語にすることができませんが、峨眉山、半月、そして時節は秋であることが明確に伝わってきます。「峨(峨)眉」は、美しい眉、美人のこと、「月半輪」とは眉の形、美人の女性というイメージも湧いてきます。私的には、この初句が一番見事だと思われ、一躍峨眉山を有名にしたように思われてなりません。

 二句目の「影」は「月影」のこと。「月影」は「月の姿」とする訳と「月の光」とする訳がありますが、「流れる」という語は、月の光が川に映ってきらきらと流れてゆくとする方がずっと美しいのでそちらを取りたいと思います。

    結句の「君」は「月」、「恋人」など諸説ありますが、金文京『李白』によると、月を擬人化して「君」と呼ぶ例は他にないため、李白を励ます書簡をくれた宇文少府を指すとするとありますので、その説に従います。

 この詩で最も特色があるのは、峨眉山・平羌江・清溪(出発地)・渝州(今の重慶、目的地)・三峽(重慶の先にある難所)という五つの固有名詞が巧みに使われていることです。

 わずか二十八文字の中に五つの地名が用いられている(小式部内侍は「大江山」「生野」「天の橋立」と三十一文字に三つでしたから、もっとすごいーという問題ではなくて)にもかかわらず、煩雑さを感じさせることなく、「月を見つめつつ旅する詩人の動きとともに流れるように詠み込まれている」と、明代末期政治家であり、文化界の領袖である王世貞が『芸苑巵言』で述べているのは傾聴に値する見解です(寺尾剛「李白にみられる蜀地方の意義 ー 「詩跡」論からの再検討ー」『愛知淑徳大学国語国文』21  1998年3月)。「平」「清」というのは「月」の縁語という説もあります。また寺尾氏が、曇天、雨天の多い峨眉山が晴れ、さやかな月がみられるのは特別に貴重な時であるといわれているのは、なるほどと思いました。峨眉山と月がみられる時は多くはない、それだけにこの詩の初句は鮮やかで美しいのです。

   李白には「峨眉山に登る」という詩(当時三千メートル級の山においそれと登れたのかどうかわかりませんが)もあり、「峨眉山」を詠んだ詩は十三首、故郷蜀の地にあった峨眉山への思い入れは深かったといえましょう。宗教上の霊山である峨眉山は、以前から知られていましたが、李白によって詩跡となったということはできそうです。

   夕食時、皆さんの話では、 峨眉山の頂上で、雨に降られてびしょ濡れだったとか(スーパー晴れ男の夫が行かなかったためかしら)。やはり峨眉山に雨はつきものなのですね。乾かすのが大変だったので、行かなくてよかったですね、といわれましたが、この離団は、少しツアーに疲れた私たちが、一日だけ味わった束の間の休息であり、かつて自由に歩いた海外個人旅行を思い出させる貴重な時間でもありました。

 3000メートルは今日で終わりですので、明日からは、またがんばりますー。

  7日目、最後の日は、峨眉山のホテルからバスで楽山へ。世界で一番大きいという楽山大仏を舟から見ます。船から大仏を見ると、歩いてきた人もたくさんいることがわかります。










 あとで、駐車場の看板をみると、楽山は、この大仏だけでなく、寝釈迦や、四天王、仁王様などたくさんの仏様があるようで、仏教の一代聖地なのでした。ツアーなので、一つだけでしたが、本当は他の仏様も見てみたかったです。
 九寨溝、黄山は標高が高く涼しかったですが、平地は35度、36度、日本と同じです。

  大仏見学が終わって、バスで楽山の繁華街にゆきますと、なんと大都会で、高層ビルが建ち並んでいます。ランチのお豆腐料理のあと、近くのイトーヨーカドーに寄りました。

 「伊藤洋華堂」と書かれています。


 なるほど漢字で書くとこうなのか、と皆感心したのでしたが、調べてみると、 イトーヨーカ堂の起源は、名誉会長の伊藤雅俊の叔父である吉川敏雄が、東京都台東区浅草に「羊華堂洋品店」を1920年(大正9年)に開業したことに遡るそうで、名称は吉川が羊年生まれであることと、当時銀座で繁盛していた「日華堂」の「華」の字から命名した(ウィキペディア)とあります。ということで、もとの漢字は「洋華堂」ではなくて、「羊華堂」だったというわけ、普遍的な漢字に変換してしまうところが、さすが漢字のルーツ中国と思わせられます。

 楽山駅は混んでいました。座れるところもないほど。さすが競争社会、中国。

 鉄道で成都東駅へ行き、ホテルに荷物を置いて、錦江街に。このツアーでみる成都市内はここだけなのです。明代の繁華街のイメージ、賑わっています。まあねえ。(あ、でも飴細工の店がありましたので、日本の縁日にあった飴細工のルーツは中国だったのだと知りました)。買い物も食べ物もあまり興味をもてず、ふと、右側に黒い柵に囲まれた広い緑の公園があるのに気づきました。結構人がはいっています。うん?市民の憩いの場?えっ有料?うーん、お金払うのもなあ、と思いましたが、ふとみると、チケット売り場に「武侯洞」とあるではありませんか。 

 うわあ、見たかったものがこんなところにあったとは。ちゃんと場所を予習しておくべきだったのに、ぼんやりしていたので、全く気づきませんでした。早速パスポートを見せ、お金を払って、諸葛孔明、劉備玄徳、三国時代にタイムスリップ。三顧の礼。映画「レッドクリフ」、記念館には、孔明の年表に沿って、彼の生涯が、人形や絵によって展示されています。


                         


 これが孔明像。中国一の知恵者で、中国一の義の人、中国人が最も愛する人物が、ここ成都に祀られているのです。中国人の団体ツアーが次々とやってきて、孔明の像の前では、ガイドさんが熱をこめて説明しています。時間もなかったので、少しだけでしたが、それでも見たかったところをみることができて大満足。決められた集合時刻まであまり時間がなかったので駆け足になって残念でした。

 そのあと、「陳麻婆豆腐」店での夕食。中国人のガイドさんが、渋い顔をして、ここが一番高い、と。それまでの田舎のお料理とは値段に格段の差があるようです。味は、まあまあおいしかったですが、田舎料理もそれぞれおもしろかった。。ヤクのお料理が珍しかったし。



陳麻婆豆腐のお料理。豚肉だったかなあ?
変面ショーをやっていましたが、新人らしくあまり変面はなし。

 食事が終わり、バスまで歩くとき、車道を渡って公園のようなところを抜けてゆきました。「杜甫草堂」とあり、右に大きな石像があります。なんと、杜甫です!

 写真を撮っている人はいましたが、誰も気づかぬようす。私一人が、わあ、杜甫だ、杜甫だと叫んでいました。 確かに、陳麻婆豆腐のお店にに近づいてきた時に「浣花」という標識がありましたし、その名を入れた建物もありました。そう、各地を流浪した杜甫は、この成都の浣花渓(花を洗う谷という意味)のほとりに腰を落ち着け、そこを「浣花草堂」と名付けたのです。      


 「浣花」という道路標識はうまく撮れませんでしたが、「浣花渓」の名がある建物の写真はこちら。杜甫草堂にゆけると思っていなかったので、せめて、近くに来た証拠でもと思って撮りました。近くだろうとは思ったのですが、まさか、ちょっとだけでもそこを通ってくれるとは思いませんでした。ツアーの行程にはないので、表だってではないけれど、さりげなく成都の重要なポイントとニアミスするような設定にしてくれた、中国人ガイドSさん、有り難う。「都江堰」には行けなかったけれど、それ以外に見たいところはクリアしました。本当に嬉しかった。

 李白のふるさと、杜甫が晩年を過ごしたところ、そして玄宗皇帝が安禄山の乱で落ちていった蜀、そして中国人の心の支えともいうべき諸葛孔明、四川省は、古代のさまざまなキーパーソンを輩出したところでもあるのでした。

 年齢的にはぎりぎりでしたが、ずっと行ってみたかった九寨溝、黄龍にもゆくことができましたし、気になっていた成都のコアポイントも制覇、落ちこぼれながらもなんとか無事に旅を終わらせることができてほっとしています。

 まとめて記事にするまで、大変時間がかかり、結局長々とした文章になりました。ここまで付き合ってくださって有り難うございました。

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