87 六月の花三題
六月の花三題
六月も終わろうとしているのに遅い梅雨入りとなりました。86には、浜名の橋跡の川岸に咲いていた楝(栴檀)の花の写真を載せました。これは五月の花ということになりますか。
六月の花といえば紫陽花なのでしょうけれど、私は、もう少し地味な花に心惹かれます。
六月十八日の午後、近くの公園で半夏生が咲いているらしいという情報があって、出かけました。自宅から二駅のところです。駅を出てから、いつも通りあれこれ迷って、ようやく方角がわかり、たどりつくまで一時間、暑い日でした。本来ならば、駅から歩いて15分くらいのところにある徳生公園の池に群生する半夏生です。
望遠レンズを構えた年配の男性が数名、すわ先客かと思ったら、誰も半夏生には見向きもせず、一人でゆっくり撮影できました。正面に芦がたくさん生えているので、そこにやって来る水鳥のシャッターチャンスを狙っているようでした。
大雨が降った翌日だったので池の水が濁っているのが残念です。
花のように見えるものは葉が変化したもので、この時期になると白くなるのです。下の写真にある、葉の先に出ている淡緑色の蕾がたくさんついているのが花ですが、葉の緑と白とのコントラストが、今の季節にぴったりで、なんともいえず魅力的ですね。白くなったところがお化粧しているようなので「半化粧」から「半夏生」となったという説もあるようです。
「半夏生」とは、七十二候の一つ「半夏生」(はんげしょうず)から作られたことばで、「半夏(烏柄杓)」という薬草が生える時期に由来します。「半夏」はこの写真とは別の植物なのですが、同じ時期に見頃を迎えるので紛らわしいですね。
七十二侯とは、二十四節気の各一気(約15日)を約5日ごとに初候、二候、三候とさらに三分割したもの、二十四節季の夏至を三等分した三候が「半夏生」、今年(2024年)の「半夏生」は7月1日からの5日間に当たります。「半夏生」が終わるとだいたい「七夕」となります(「七夕」は五節句で、二十四節季や七十二候とは別の名称です)。
同じ池に張り出したデッキのようなところに、合歓の花が綺麗に咲いていました。盛夏の花と思っていましたが、早いですね。
象潟や雨に西施が合歓の花 芭蕉
ああ、有名過ぎますね。雨も降っていないし。合歓の花というとこれしか思い浮かびません。 「西施」は紀元前5世紀、春秋時代末期、越王勾践が、呉王夫差に、復讐のための策略の一つとして献上した美女の名で、夫差は西施に夢中になり、ついに越に滅ぼされたという、まさに傾国の美女。昔覚えさせられた四字熟語「呉越同舟」「臥薪嘗胆」もこの時代のもの、「西施の顰みにならう」などという諺もありました。
さて、三つ目は6月21日、夕暮のジャカランダ、熱海にて。
夕方だったので、あまりくっきりはしていませんが、思ったより咲いていました。去年、同じ頃いった時は、たった一輪しか残っていなかったので、今年は大収穫でした。ホウオウボク、カエンボクと並んで、世界三大花木の一つに数えられている、ノウゼンカズラ科のジャカランダは、ブラジルや南アフリカといった南半球の桜といわれる、気品のある青紫色の花を開きます。種をもらって鹿児島や宮崎でも咲いているそうでした、近場は熱海かな。ジャカランダ祭りは終わっていましたけれど、これだけ見る事ができて嬉しかったです。
ジャカランダは、お宮の松の、貫一お宮の像がある公園に植えられています。
貫一の足に夕日が当たっています。
インバウンドらしきグループが、この像の前で、女性が貫一役、男性がお宮役になって、像も入るように写真を撮っていました。女性が強くなった現代ならではの楽しみ方かも。
どんなものかと思っていささか心配していたこの銅像も、こんなふうに読み替えて楽しんでしまうなんて、若い人はなかなか面白いです。
さすがに、その写真は撮らなかったので、適宜ご想像下さい。
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