39 玉川温泉と「湖岸みずうみ」
玉川温泉と「湖岸みずうみ」
5月18日(水)、19日(木)
秋田の玉川温泉に行こうというので出かけました。お互いの仕事の都合をつき合わせると一泊しかできないので、朝は満員電車の中で荷物を背負って出発。
新玉川温泉と玉川温泉、二つあって新玉川温泉の方が手前にあります。温泉は同じで新玉川温泉の方が施設は新しいらしいのですが、本家本元の方にしようと、奥の玉川温泉に宿をとりました。焼山のふもとにある玉川温泉は、1 ケ所から毎分9,000リットルのお湯を湧出し、pH1.2と日本一の強酸性の温泉水(98℃)を誇る国内屈指の温泉です。建て増しした棟はとても広くて、自炊棟と旅館棟とに別れています。一泊ですから自炊ではなくて、旅館棟に。部屋はそれほど広くはありませんが、和室にベッドがT字型においてありました。
お風呂の湯舟には、それぞれ「源泉」とか、「50パーセント」などと書かれています。源泉はとても濃くて、特に傷がなくても、こすったくらいの跡でもジワジワとしみるようで、30秒も入っていられず、50パーセントの方にしました。源泉に長く入っている人もいます、すごい。温泉を飲むところもありますが、必ず薄めるようにと注意書き。紙コップに少し注ぎ、たくさんの水を入れましたが、確かに酸っぱい、炭酸を入れるとソーダ水になりそうです。
食事は、 夜も朝もバイキング、行列して並べられているものをとり、学食のようなテーブルで食べます。お魚やお肉はあまりありませんが、野菜がおいしくて、とくに朝の近くの牧場から取り寄せるヨーグルトと小松菜スムージーは絶品でした。
翌朝、近くの山に見える残雪を望みつつ自然研究路を歩きました。早春の花、コブシに似た白い花がたくさん咲いています。タムシバ(ニオイコブシ)というようです。調べてみると、コブシは花の下に必ず葉が一枚つくのだそうですが。タムシバにはそれがないとありました。それにコブシは、大木になりますが、タムシバはたくさんの細い木が上を向いていますから、どうみても違います。山に咲く花なのでしょう。
硫黄の結晶に彩られた黄色の穴から熱い蒸気が噴き出しています。川は濁った温泉の水が流れています。水力発電所を作るために田沢湖にこの川の水を入れたら、魚が死滅したので、アルカリの石灰を入れて中和し、少し魚が戻って来たのだとか、非常に強い酸性なのですね。皆、ゴザを持参して、思い思いのところに寝ころんでいます。このあたりはパワースポット、温泉の地熱を吹くんだ岩は北投石(学名ホクトライト)といって、台湾の北投温泉で発見されたものと同じく、ラジウムを含有していて放射線を放出するので、癌などの病を癒やすのだとか。なんと無料。
夕方、お風呂で髪を乾かしながら話した方は八十代の女性、札幌から毎年来ていて、自炊棟に泊まり、これから月末まで二週間滞在するのだとか。北海道もたくさんよい温泉がありますが、わざわざこちらまでいらっしゃるのですか、というと、ここは世界で一つしかないからね、自分は独身で働いていたけれど、稼ぎの多くはここに来て費やしたというのです。まだ若いから、働かなければ駄目だよ、とも。うーん、退職したのですが、若くみられたのでよいことにしておきます。インドのヴェナレス(バラナシ)も聖地ですが、あちらは死にゆく人がゆく聖地、玉川温泉は生きるためにゆく聖地なのでしょう。
行きも帰りも、バスからみる新緑は濃く薄く、どれもみな違う色をしていて、新芽は煙るようでした。玉川ダムの近く、宝仙湖の水の色はとろんとした青緑で、最高に美しかったです。水芭蕉も少しだけ残っていました。熊による人身被害のため入山禁止という立て札もありました。冬眠から出た熊は毒消しに水芭蕉を食べる、と聞いたことがあります。
(バスの車窓からはあまり良い写真が撮れませんでした)今、思い出しても、往復のバスの景色と玉川温泉の新鮮な野菜が並べられたあの食事は夢のようだと思うのです。このように美しい新緑を見ながら、しかもそれほど人が多くない平日に旅をすることなど、今まではできなかったことでした。
バスの終着田沢湖駅の停留所前に「みずうみ」というレストラン兼みやげ物店がありました。天然蜂蜜があるというので聞いて見たら、今年は蜂が蜜を集めている最中だから、まだ品物がないのだとか、残念。列車こまち号を待つ間、お茶にしました。
ちょっと店の名前が気になったので、今は閉まっている田沢湖の「湖岸みずうみ」というレストランで昼食をとったことがあるのですが、同じ名前ですね、と店の主人らしき人に聞くと、自分の親の店だった、といいます。お父様はなくなり、お母様は施設に入っているという話でした。ご両親のお店の名前をとってつけたのですね。
それ以上詳しく聞くことはできませんでしたが、帰ってから、「湖岸みずうみ」があまりによかったので、Tripadviser に口コミを書いたことを思い出し、検索してみました。
「田沢湖」「レストラン」でみると、古すぎてもう載っていません。けれど、マイページをみると全部ありました。ウーン、口コミ102件、よく書いたものです。何故って、Tripadviser は、今でこそ世界的な旅行の口コミサイトとして有名ですが、日本進出の頃は、殆ど口コミがない状態、それで口コミを一つ書くごとにJALのマイレージ100マイルをプレセントするというキャンペーンをやっていました。一ヶ月3件までという条件がありましたから、毎月3件ずつ月に300マイル、レストランや宿など旅先の情報を書き込むことでマイルを稼いでいたのでした。今はそんなこともなくなりましたし、コロナで海外にゆくこともありませんから、とんとご無沙汰してしまっていました。
でも、マイページを見ると、日時がわかり、自分の旅行の記録になっているのですね。たいした記録もつけていなかったので、これは有り難いとコピーして保存しました。
「湖岸みずうみ」と食事「山菜定食」の写真です。2013年6月16日、9年前、第4代中華民国総統であった親日家の李登輝も泊まったという、抱返渓谷の宿「都わすれ」に泊まった翌日のことでした。
そう、山菜料理がたくさん出たのです。手間のかかる山菜、今頃はシーズンですね。盛岡駅には売っていたのですが、行きだったのであきらめ、帰りの田沢湖駅にはなし、少し歩いてスーパーまで行ったのに、山菜はありませんでした。ワラビとフキの水煮だけ(あ、ミズだけはたくさんありましたが、あれはフキよりも細い茎をゆでて一本ずつ外皮をむくので、手間がかかるのでそんなに大量にはいらないのです)。たぶんこのあたりには山菜など売っていないのです。北海道の奥尻島に行ったとき、ガイドさんが、この島には魚屋さんがない、といっていました(おみやげ用のウニなどは売っているらしいのですが、その日は休み)。土地の人にとってたくさんる捕れる魚はもらうものであって、買うものではないらしいのです。田沢湖あたりもそうかもしれませんね。東京近郊に住んでいる者には想像することもできない、その土地ならではの通念があるのかもしれません。
昔、家人の転勤で三年ほど秋田市内に住んでいて、リヤカーを引いたおばさんが、山菜やキノコを持って来てくれたので、すっかり山菜好きとなり、山菜がピークの今頃の季節、こちらではなかなかよいものが手に入らず、残念です。
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