56 ハックルベリー・山葡萄・四鳥の別れ
ハックルベリー・山葡萄・四鳥の別れ
宿は平泉ではなく一関の亀の井ホテルに泊まりました。元「かんぽの宿」として知られていたのですが、今年の3月から、「かんぽの宿」は3軒を除いてみな亀の井ホテルの傘下となったのだそうです。
もちろん高級ホテルではないのですが、シモンズベッドのツインの部屋があるというので、それでもいいかということで泊まりました、温泉もあり、食事も前沢牛のすき焼き、アワビステーキ、松茸土瓶蒸し、となかなか豪華でした。松茸土瓶蒸しがとてもおいしかったです。
翌朝猊鼻渓へ。車で30分くらいです。北上川支流の砂鉄川沿いに、高さ50mを超える石灰岩の岸壁が、およそ2kmにわたって続く渓谷の舟下り。1時間おきに舟が出るので、舟の時間を待ってひがしやま観光ホテル1階の「Cafe Ship」でお茶、ずんだの餅スィーツが美味でした。
普通は舟は川下りが多いのですが、ここは上り下りの往復をするところが珍しいのだとか。上りもエンジンではなく船頭さんが漕ぐので、人数が多いと大変そう。この砂鉄川も鉄だけではなく、砂金が出たのだとか。衣川と同じ水系なのでしょうか。
途中大文字草が咲いている、と船頭さんに教えてもらいました。たしかに花が「大」という文字の形をしていて、そのままのネーミングですね。
舟下りの前に一関の「道の駅厳美渓」にてショッピングをしました。隣には一関市博物館があり、「皇室と日本美ー宮内庁三の丸尚藏館と岩手ー」という展示をしていました。三の丸尚藏館が工事中ですから、収蔵品の一部を貸し出しているのかもしれません。さて、道の駅でみつけたものは、 ハックルベリーと山葡萄です。
ハックルベリーといえば、マークトウェインの「トムソーヤーの冒険」で、トムの友人として登場するのがハックルベリー。ベリーの名前だったとは知りませんでした。ところが検索してみると、なんとベリーではなくて茄子の仲間とあります。どうみても、少し大きなブルーベリーなのに。
珍しいものはとりあえず買ってしまうたちなので、少しずつ買って持ち帰りました。
ハックルベリーはジャムにするとよいらしいのですが、茎などに毒があるそうなので、重曹で灰汁抜きをしてジャムにしました、重曹を抜きたかったのですが、あまり洗ったらせっかくの味がなくなってしまうと思って。1、2回だけすすいで砂糖を入れてジャムに。うーん、特に味がないような。まあ形があるのでヨーグルトに入れて食べました。
期待の山ぶどう。最上川の売店のおじさんが熊と競争で採るのだといって、惜しそうにしていた高価な山ぶどう、こちらは440円でたっぷりあります。
砂糖を入れても少なすぎてジャムーにならないので、シロップに。ザルに残った実と種は、大根のヤマブドウ漬けに。とろろもいいかな。
珍しいもの好き(植物に限りますが)なので、ついこんなことになります。いつもうまくゆくとは限りませんが、ハックルベリーを知ったのは収穫でした。何でもまだ知らない新しいことを知るのが大好きなのです。
数年前のことですが、最上川下りの時に売店のおじさんに聞いた話では、 熊は山ぶどうの蔓が木と木の間を橋のようにかかっているところに寝そべって、次から次においしそうに山葡萄を食べるのだそうです。なんだか鮮烈にイメージが浮かびますね。
熊は山葡萄だけではなくて野イチゴも大好きらしいです。小学校の頃、卒業式か何かの時に来賓の方が話してくれたのですが、熊の母親は、子供が一人前になると、野いちごがたくさんある秘密の場所につれてゆくのだそうです。子供が野いちごを食べるのに夢中になっているうちに、母熊はそっと去って行くのだ、とか。来賓のお話というのは、あまりおもしろくないことが多かったのですが、この話だけは忘れられませんでした。
子供を自立させる、あるいは子供が自立する時の親というものは、言葉ではあらわせないほど強い決断を迫られ、あふれてくる激越な感情に耐える必要があるのだ、と思います。
私が好きなのは、母鳥が四羽の子供を一生懸命世話し、子供たちが巣立つ時には涙を流して見送ったという「四鳥の別れ」というお話です。たったそれだけの話なのに、なぜか、ずっと心に残っていました。
長男が大学を出て就職が決まり、会社の研修に行くといって玄関を出た時、それまではにこやかに笑って見送っていたのに、涙が止まらなくなりました。何ヶ月かの研修が終われば家に戻ってくるはずなのに、なぜだろうと思ったのですが、彼は研修後そのまま会社の寮に入り、家に戻ることはありませんでした。もちろん泊まりに来たり、遊びに来ることはあったのですが、その後一緒に暮らすことはなかったのです。あの時、いきなり涙があふれて止まらなくなったのは、心の深いところで、これが親子として一緒に暮らしていたことの別れであるということに気づいていたからかもしれないと後で気づいたのでした。
山葡萄からこんなことを思い出しました。
一ヶ月に三題書くペースを崩さないようにしていたので、この平泉、一関の三話は十月に書き終える予定でしたが、すっかり遅くなってしまいました。
明日からしばらく不在となります。
PCに向かうことができるようになりましたら、簡単なご挨拶をしたいと思っています。
皆様もどうかお元気で。
コメント
ハックルベリーは、ヨーロッパにいた頃には、結構耳にしたように思いますが、そういえば日本ではレアですね。
食文化に貪欲にチャレンジなさる姿勢にはいつも感服しております。
親離れ子離れは、少子化の現在、かなり難しい問題かもしれません。野生の動物たちは見事ですね。ギリギリまでたっぷり愛情を注いで、それを引きずらずに次のステップに移るのは、人間にとってはなかなか困難なようです。でもご令息とのお別れのシーンは、映画のようで感動的でした。
我が家は、結構クールで、20歳までで独り立ちを言い渡し、学費は大学4年までは出しましたが、その後は一切手も口も出さないでやってきました。ちょっと異質だったかもしれません。ですから、三人の子供たちからは、それぞれプラの衣装ケース2個分ずつの預かり物はしていますが、子供部屋はもうありません。コロナでちょっと中断していますが、子供たちと配偶者、それぞれが自分の誕生日に他の家族を招待して誕生会をやるのを慣例にしています。あとは、正月の全員集合とお彼岸の墓参は都合をつけての個人参加です。
コメントありがとうございました。
ハックルベリー、ヨーロッパでは普通にあるのですね。私は短期滞在なので知りませんでした。一緒にいった義姉はよく知っていて、となりの庭にあって、ジャムをもらうといっていたので宮城県ではメジャーなのかもしれません。
三人のお子さんの子離れ、見事に成功させたとはずばらしい、さすが御輿さんです。うちはまだ子供の荷物が結構残っています。なんとかしなくては、といつも思いつつ。